西安金橋国際旅行会社と陝西友聯国際旅行会社のブログ

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京都・読書之森 京都を古地図で歩く本/京都

(ロム・インターナショナル編、河出書房新社、620円(税抜き))

 「昔の記者は足で稼いでネタを探してきた。これだから最近の記者は……」。取材先の警察官からたしなめられ、なるべく休日は京都市内を出歩くよう心に決めている。今見ている京都の風景は、どれくらい昔の姿をとどめているのだろう。そんな疑問への答えを求めて買ったのが本書だ。

 京都で約1200年前に造営された平安京は、中国の巨大都市である洛陽と長安を模倣したとされる。碁盤の目のように街路が直線に交わる都市計画は共通だが、平安京には「城壁」がなかったという大きな違いがある。

 本書では「唐の洛陽や長安では、異民族侵入に備えて都の周辺に城壁が築かれたが、京都の場合はそうした恐れがない」と紹介。代わりに「天皇の住まいと政庁を兼ね備えた大内裏(だいり)(平安宮)が都の北部中央に築かれた」と説明している。

 現在の京都御苑上京区)は、かつて天皇が住んでいた京都御所が残され、門や塀などで囲まれているが、外敵を威圧する城壁のような高さはない。以前住んでいた都市の副市長が観光PRで訪れた中国・北京市で、旧王宮の紫禁城を見学した際、城壁を含む巨大なスケールに驚いたという話を思い出した。

 その時、私は中国だから建物も自然と大きくなるのは当たり前だろうと思ったが、副市長は「巨大な建物を造るのにどれだけ多くの民衆が苦役を強いられ、犠牲になったのか。建物の大きさでなく、人々を動員させた権力の強大さに寒気がした」と話したことが今も印象に残っている。

 晴れた日に京都御苑内を歩いていると、門の先に青々と横たわる東山が間近に感じられ、苑外に出ればすぐ近くに鴨川もある。天皇をはじめとする京都の歴代の権力者は、力を誇示する手段としての城壁よりも、四季折々の自然や眺望を大切にしてきたのではないか、と推測した。

 本書では他にも、豊臣秀吉が建立した方広寺にあったという奈良・東大寺の大仏より大きい仏像(高さ約19メートル)をはじめ、相国寺にあった幻の七重塔(同109メートル)、今はなき羅城門や東寺と対をなす西寺も古地図などを用いて解説している。

 天皇退位と新天皇即位が話題になる中、京都市内を南北に貫く「烏丸通」は大正、昭和両天皇の即位大礼の際に、京都駅から京都御所まで行進が行われ、「行幸通」として知名度を上げた歴史もつづっている。

 「自然が結構あって田舎だけど『華』があるのが京都」。前任地の北陸で京都に住んだことがある知人の言葉だ。その華がどこにあるのか、いにしえの都を歩いて探し続けたい。【中津川甫】